『正しい本の読み方』橋爪大三郎
初めまして。
最近よく本を読むようになったので、備忘録として色々書いていこうと思います。
記念すべき第一冊はこれです。
本を沢山読むことを決めたので、まずは意識的に本の読み方についての本を買ってみました。三冊くらい読んで、一つは途中で肌に合わないと感じたのでいったん放置、一つは読書の方法論としては分かりやすくてそれなりに有益(今度記事にするかも)、最後の一つがこの『正しい本の読み方』で、一番得るものが多く面白かったので紹介します。
まずこの本の特徴として、難しいこともかなり分かりやすく書かれています。難解な単語はあまり登場しないし、一文々々が短いので、読んでいて躓くことがほとんどない。著者の橋爪大三郎は社会学者で、文中によく哲学っぽい話が出てくるのに、全く重苦しい感じは受けない。文体も優しいおじいちゃんといった感じで、尖ったビジネス本みたいなものを読んだ後にこの本を読むと暖かい印象すら受ける。それなのに、例えばニーチェとかレヴィストロースの小難しい思想が抵抗なく頭に入ってきて、どうやったら他の本についても同じような読書体験が得られるかまで教えてくれる。手っ取り早くニーチェとレヴィストロースを理解してカタルシスを得たい人にもおすすめです。
内容に入ります。
この本は基礎編、応用編、実践編に大別される。そこからさらに章立てされていって、全部で8章に分かれています。全部書く自信がないので、自分が書けそうなところ、気に入ったところだけ書いて、それ以外はすっ飛ばします。興味が湧いたら購読してみてください。(ちなみに、本の読み方という技術的なことについては、基礎編の最初の三章で網羅できます。ニーチェとかは応用編で出てきます。)
第一章
「なぜ本を読むのか」ということについて書いてあります。「知識を得るため」とか「儲けるため」とか書いてあったらこの本をぶん投げていたかもしれません。しかし、人間の個別性だとか、生まれつきの自由と不自由だとか、哲学っぽい話題から出発します。平たく言えば、「自分とは何か」問題です。全体として、哲学っぽい話題に寄って議論が進むのがこの本の特徴ですね。
結論はというと、ちょっと端的に言えるような内容じゃないのですが、自分とは何か問題に関係するような、深い結論が用意されています。気になる方は本に直接聞いてみてください。(私の能力では一般化できなかった、、、)
第四章
この章の主題は、「本から何を学べばよいのか」です。思想には、構造と意図と背景があると言います。マルクスの思想にもレヴィストロースの思想にもこういうのがあるわけです。そこで、この人たちを例にとって本から学ぶ「読み方」を伝授してくれます。この章が最も読む価値がある箇所だと思います。
第五章
この章は、本は別に記憶しなくていう話に始まって、学生の試験勉強の方法にまで言及します。特に、指定の範囲があって、その範囲で覚えたことを試験で試されて…みたいな教育を受けさせられる、高校生までに特に読んでもらいたいです。私が高校生の時にこれを読んだら泣いたかもしれない。(盛りました。)
そろそろ疲れてきたのでこの辺でやめようと思います。とにかくこの本には、タイトルの「本の読み方」のテクニックに留まらない重要なことが書いてあります。私自身も折に触れて読み返すことになると思います。難しい概念をスカッと説明してくれる副作用もあります。第一回のブログの題材としてあえて選んだくらいだから、最近読んだ本のなかでもかなり気に入ってるし、おすすめ度も満点です。
それではまた次の記事で。
追記
書き終えてみたら、自分にとって忘れるべきでないことの抽出よりも、本の紹介に終始してしまった気がするので、簡単に教訓をまとめておきます。
・本と本には関係がある
・入門書は偉大
・クラシックスはとても重要な事柄を世界で最初に書いた本
・読んだ後はボロクソ言っても、読んでいる最中は素直に読む
・読むときは感情を封印した方がいい(マジか)
・構造(文が全体の中で果たす役割)と意図(他の本との関係)と前提(議論の下敷き)を見抜く
読むことについてのテクニックとしてはこんなもんでしょうか。ちなみにニーチェの場合は意図がリカードとの対立、前提がヘーゲルの弁証法ということになるみたいです。要するにリカードとヘーゲルを知らずに『資本論』の理解はあり得ないと。求めるレベルが高すぎる気もしますが、逆を言えばこのレベルに達しないからニーチェとかを読んでもずっともやもやする、ということにもなりますね。いつか入門書に頼らずこういうのを見抜いてやりたいものです。