経済学部生の読書感想文

要約や感想を書いていきます

『ゼロからわかる 経済学の思考法』小島寛之

f:id:mryrnsk:20210514205330j:plain

 

今日はこちら。

面白いか面白くないかというと、(私は経済学部生なので)面白かったです。

難しいか難しくないかで言うと(数弱の私には)ちょっと難しかったです。

おすすめかおすすめじゃないかというと、(商談をするかもしれない、もしくはしている人と、合コンで最適なカップリングを実現したい人と)経済学部生にはおすすめです。

 

タイトルの訂正から。

まず、ゼロからは分かりません。需要・供給曲線をとりあえずは知っている人と、ある程度数学に耐性がある人なら大丈夫だと思います。まあ私は高校の定期テストの数学では赤点連発、最後のセンター試験数学ではⅠA・ ⅡB 平均で5割しか取れず、その前年は分からない2桁の空欄に欅坂(現役受験した時はまだ欅坂だった)にあやかって46と書いた私でもついていけたので、大半の人は条件をクリアーしていると思います。

 

次に、経済学の思考法と言いつつ、経済学の全般に言及するわけではありません。この本はミクロ経済学で最も重要な、需要・供給曲線についての話にほぼ終始します。なので、これを読んだら経済学者の思考法が丸わかりになる!とはいきません。がっかりした人のために私が代わりに答えると、経済学の思考の本質とは、「人間が完全に合理的にしか動かないという前提のもと、全然合理的じゃない人間の経済活動をできるだけ数学に還元して記述すること」です。苦手分野の世界に来ちゃった、、、、。これは現時点での持論に過ぎないのでふーんくらいに思ってください。

 

では何が分かるか。

突然ですが皆さんは、自分の中に需要曲線を持っていますか?需要曲線とは、ある商品について「この値段だったらこのくらいの量購入しよう」というのをグラフにしたものです。売り手から見た供給曲線は「この値段だったらこのくらいの量売ろう」となるわけです。持ってる人、いないですよね。いたら完全に変態です。

この需要曲線と供給曲線が交差する点(経済学的には均衡点と言います)において、価格と取引量が決まるという理論なんですが、そんなの持ってねーよ!!というところから話が始まります。この需要・供給曲線のコチコチの理論を、一般的な人間の感覚に落とし込む本と言っても過言ではないと思います。

もう一つ。経済学は、どうやら「小難しい」、「ちっとも現実的でない」というレッテルを張られているようです。受験やり直してもいいですか?ここで悲しい気持ちになった経済学部生を、ちょっとだけ元気にしてくれるのもこの本の効用です。

この2つが、主にこの本から得られるものと言ってよいでしょう。

 

それで、この本は大きく2つのパートから成っていて、前半はオークションの話、後半はゲーム理論の話です。

ゲーム理論と聞いてモンハンやりたくなっちゃった人のためにもう少し書いて終わりにしたいと思います。

 

ゲーム理論っていうのは、「人間の行動をすべてゲームと見なして、プレーヤー全員が、他のプレーヤーの行動を予想しながら、自分ができるだけ得をするように自分の採る戦略を考えるもの」のことです。実際の社会と同じじゃん!と思った高校生以下の人は、是非経済学部への進学を検討してみてはいかかでしょうか。ともかく、このゲーム理論が色々なことに応用できるわけです。商品の価格を決めるだとか、商談でいい結果を出すだとか、合コンで…................................(以下略)。ゲーム理論は要するに、参加者とのやり取り―――商取引だとか関係を結ぶだとか―――の中で、自分の利益を最大化するように動くわけです。商談ならできるだけ高く自分のものを売れるように、合コンならできるだけお気に入りの相手と付き合えるようにってことですね。

これだけ聞くと簡単なんですが、実はここに経済学が現実的じゃないとされる理由が詰まっているように思います。ゲーム理論では、利益が数字で与えられるのです(そうじゃないのもあるかもしれませんが)。商談なら分かりやすいですね。自分が商品を売ろうと思うとき、この価格以上ならいいかと心に決めて商談に臨みます。買い手は、この値段以下なら買ってもいいなとなるわけです。それで、価格がこの2人の心の中の幅のどこかに落ち着くと。

しかし、現実に、商談の前にこの価格以上なら…と心に決めていく人はそう多いでしょうか。ゲーム理論を使うというのは、すべての物事の価値を自分の中で定量化するということです。物の値段ならいいでしょう。合コンなら、目の前の異性を見比べて、こいつは何点、こいつは何点…と点数化するということになります。もちろんこういう人もいるかもしれませんが、全員が全員そうではないでしょう。でも、ゲーム理論は、人間は全員合コンで相手に点数をつけるという前提のもと議論が進むのです。

 

経済学の非現実っぷりが伝わったでしょうか。ちなみにゲーム理論はわりと(経済学史的に)最近できたもので、これでも経済学を少しは現実の方向に推し進めた大発見だそうです。数学と非現実。経済学部生としての諦念は深まるばかりです。

 

 

 

ちなみに私は合コンは未経験です。